こんにちは。WINGイオンモール白山店の河崎です。
いつもスタッフブログをご覧いただき、ありがとうございます。
突然ですが、皆さんは「良い時計」と聞いたとき、どのような姿を思い浮かべますか?多くの方は、スイス製の複雑機構や、きらびやかな高級スポーツウォッチをイメージするかもしれません。しかし、時計の世界にはそれらとは全く異なるベクトルで、世界中の時計愛好家やクリエイター、そして私たち時計店のスタッフを虜にし続けているブランドがあります。それが、ドイツが誇る独立時計メーカー「ノモス グラスヒュッテ(NOMOS Glashütte)」 です。
「いつかは欲しいけれど、ちょっと自分には派手すぎるかも……」
「お値段も高すぎて、何から選べばいいかわからない……」
そんなふうに悩んでいる時計初心者のあなたにこそ、真っ先に知ってほしいブランドです。
それでは、早速!時計知識ゼロからでもよくわかる、ノモスが世界中で愛される理由を名前にも刻まれている「グラスヒュッテ」という場所と、ノモスが生まれた背景から見ていきましょう。
そもそも「グラスヒュッテ」って?
ノモスの名前に付いている「グラスヒュッテ」。これは、ドイツの山奥にある人口数千人の小さな町の名前です。
「時計の聖地といえばスイスじゃないの?」と思いますよね。
実はこの町、時計の世界ではものすごい場所なんです。例えるなら、日本の伝統技術を支える職人たちがひとつの小さな町に集まり、何世代にもわたって技術を磨き、受け継いできたような場所。1845年から続く時計作りの歴史と伝統技術が今も息づいているからこそ、グラスヒュッテは世界中の時計好きから「時計の聖地」と呼ばれる、特別な町なんです。
なぜ山あいの小さな町に、時計作りの技術が集まったの?
もともとグラスヒュッテは、銀などの鉱山資源に恵まれた地域でしたが、時代とともに鉱山業は衰退、、、町は大きな困難に直面します。
そこで活かされたのが、この地域の鉱山業で磨かれた精密な金属加工などの職人技術でした。そこに目を向けた優れた時計師が1845年、時計工房を設立し発展していきます。
こうして、これまで培われてきた職人技術を活かして、鉱山の町から「時計の聖地」へと、生まれ変わりを果たしたのです。
ベルリンの壁崩壊から、わずか2ヶ月後の「奇跡」
ノモスが生まれたのは1990年1月。かつての職人技が光る高級時計作りは、第二次世界大戦後の東西分断によって、一時的に歴史の表舞台から消えていました。そんな歴史ある時計の聖地に、奇跡の瞬間が訪れます。
それが、1989年のベルリンの壁崩壊です。
ドイツが再びひとつになり、世界中が「新しい時代が始まる!」と大興奮に包まれる中、ある一人のデザイナーが、この町の可能性に目を向けました。
「歴史ある世界最高の職人技術を、今度こそ自分たちの手で、最高におしゃれな形で蘇らせるんだ!」
まだ世の中の混乱が収まっていない、崩壊のわずか2か月後に、新しいブランドを立ち上げました。これこそが「ノモス」の始まりです。
でも、いくら情熱があっても、たった2ヶ月で世界に通用する時計を作るなんて普通は不可能です。それができたのは、この町には「腕を振るいたい時計職人たち」がすでに揃っていたからでした。
もともと眠っていた最高の技術に「自由」という火がついたからこそ、わずか2ヶ月という奇跡のスピードでスタートを切ることができたのです。
ちなみに「NOMOS(ノモス)」とは、ギリシャ語で「秩序」や「法」を意味します。バラバラになってしまった伝統を、もう一度正しく美しく整える——。そんな熱い決意が、このシンプルな5文字の名前には込められています。
本物の証:「GLASHÜTTE」と刻まれているのには理由がある
ノモスの時計をよーく見ると、文字盤の6時位置に小さく「GLASHÜTTE」という文字が刻まれています。実は、この文字を刻むためには、法律で定められた非常に厳しい条件をクリアしなければなりません。
それが、通称「グラスヒュッテ法」という法律です。
グラスヒュッテの時計産業には、製造地表示を保護するための「グラスヒュッテ規則」があり、時計の必要不可欠な製造工程の50%をグラスヒュッテで行うことなどが求められています。
つまり、単に「グラスヒュッテにある時計屋」というだけでは、「Glashütte」と名乗ることはできないのです。
それだけ、この小さな町の名前には、時計産業における大きな価値があります。
そしてノモスは、現在では自社製ムーブメントを開発・製造する本格的なマニュファクチュールへと成長しています。自社製キャリバーの設計・製造はもちろん、時計の精度を左右する重要な部品である脱進機についても、自社で開発。「自社生産比率 95%以上」という驚異的な数字を誇っています。
「シンプルなデザインの時計だから、作りもシンプルなんでしょ?」
と思ったら、大間違いです。
むしろ、そのシンプルな時計の中にこそ、ノモスのこだわりがぎっしり詰まっています。
実は、一からすべてを自社で作るには、天文学的なお金と設備、そして膨大な時間がかかるため時計業界全体を見渡しても、ほんの一握りの超名門最高級ブランドしかやっていないことなんです。そこで、このように時計の心臓部を自分の会社で一から作れるメーカーを「マニュファクチュール」と呼び、最高峰のステータスとされています。
ノモスは、その本物のプライドを持っているブランドなのです。
さらに驚くべきは、その「価格」です。
マニュファクチュールブランドの時計は、普通なら高額になります。しかし、ノモスは、その本物の職人技が詰まった本格時計を、私たちにも手の届く価格で真面目に作り続けています。
彼らはこの凄さを、大々的に広告したり自慢したりしません。ただ静かに、誠実に、最高の時計を実直に作り続けている。この「中身の圧倒的な凄さと、嘘のない誠実さ」こそが、私たち時計店スタッフがノモスを愛してやまない最大の理由なのです。
次回へ続く:ノモスを形作る「二つの魅力」
時計の聖地で生まれ、本物の職人技で作られるノモス。しかし、彼らが初心者にこれほど支持される理由は、歴史のストーリーだけではありません。
次からの連載でご紹介する、他のブランドにはない「二つの圧倒的な個性」があるからです。
次回は、初心者にこそ知ってほしい、時計に命を吹き込む「手巻きムーブメントの楽しさと美しさ」について深掘りしていきます。
そして続き、なぜノモスの時計がこれほどまでにセンス良く、知的に見えるのか、その「デザインの秘密」を徹底解剖します。
ノモスを知れば知るほど、高級時計がもっと身近に、そして愛おしく感じられるはずです。
次回の更新も、ぜひ楽しみにお待ちください!